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集中治療の現場から見た現状と今後の課題

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国内屈指の集中治療体制を整える東京女子医科大学病院では、ECMOの世界機構であるELSOに登録し、 2021年にはECMOセンターを立ち上げ、世界標準のECMO治療・教育を実践し研究における国際的センターとなることを目指しておられます。新型コロナウイルス感染症パンデミック下でのご尽力を通じて、今どのような課題を捉えていらっしゃるのか、同大学病院 臨床工学科・集中治療科 教授の市場晋吾先生にお話を伺いました。

使命感で乗り越えてきた厳しい現状

「東京女子医科大学病院では通常患者とコロナ患者の受け入れ両立に尽力した結果、一時期は抑えざるを得なかった手術件数も、2021 年 6 月現在では通常比 8~9 割の件数を行うまでに回復しています。ですが日本でも待機手術の延期やキャンセルが顕著になってきている病院もあると思います。ICU についても患者収容は看護スタッフの数に影響されるので、ベッドが空いていても断らざるを得ないことがあるでしょう。

コロナ対応をしながら通常患者の治療にも取り組むには、PCR 検査 2 回の陰性を確認できるまで隔離しなければならないなど、入院のプロセスや事務処理も複雑化し、それだけでも負担が大きいのが現状です。当院ではそのプロセスを整理し、今ではスムーズな運用を確立していますが、特にコロナ対応 ICU で働くスタッフは PPE(個人用防護具)フル装着の負荷もかかるので、体調不良を来すこともあります。それでスタッフが不足するとそれを補うスタッフの負担がまた増える、と、コロナ対応の医療者の負担は常に大きく疲弊してしまうのが実状です。さらに ECMO を導入するとなると、1 人の患者につき約 6 人という複数のスタッフの関与が必要なので、平常時の ECMO 導入に比べて 3~4 倍は大変だと言えるのではないでしょうか」

 

現場に根差したワークフロー支援型の IT ソリューションを期待

「このような状況を院内一丸となって乗り越えるべく、特別シフトを組んで、内科も外科も、他の診療科の先生も防護服を着てコロナ病棟で対応していますが、医療者の負担が癒える見通しはまだ立っていません。こういった現状を思うと、もっと優れたワークフロー支援や管理の方法が求められます。

例えば臨床工学部でいうと、臨床工学技士は、手術室、集中治療室、カテ室、透析室、機器管理室などの様々な各部署で働いており、これらの部署は複数の病棟に点在していてお互いに何をしているかは見えません。でも、もし管理者にとって”見える化”ができたなら、どこかの部署で臨床工学技士が不足している場合、別の余裕のある部署からすぐ移動してもらって、スムーズにヘルプできるようコントロールできるかもしれません。全体最適のもと補完し合える余地があるかもしれません。

また、例えば ECMO システムの IoT 化もアイデアです。複数の ECMO 患者が、別々の ICU 部門で治療を受けている場合に、ポンプや人工肺の状況を遠隔で一元管理し、必要なときに適切な医療者にアラートを送ったり、遠隔指示を出したりといったことができたなら、もっと迅速に的確な処置が出来るし、安全で効率良く複数の患者さんをケアできると思います。ECMO では、 24 時間体制で各機器の作動状況を把握し、刻一刻と変化する患者さんの状態に合わせて機器の設定が調整できる、高度な医療システムが求められるからです。

今回コロナ禍で新たなテクノロジーや IT 化の必要性を身に染みて感じている病院経営者、医療従事者は多いのではないでしょうか。患者さんの不安を少しでも取り除き、笑顔をみるためにも、病院施設にも IT 化への協議や投資が求められていると思います」

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